
冬をむかえ、部屋で焚くアロマを少し変えてみました。
今回は、精油ができるまでと、空気の清浄効果も期待できるこの冬におすすめのアロマ(精油)を3つをご紹介したいと思います。
※以前アップした記事に追記しました。
アロマについて
アロマとは、芳香植物が種の生き残りをかけて作り出してきた物質(芳香成分)です。
自然には多くの細菌が存在し、中には、悪い影響を与えるものもあります。
自ら動けない植物は、芳香成分(アロマ)を出すことで感染や外敵から身を守ります。
この芳香成分を人間のために応用したのが、精油(エッセンシャルオイル)です。
一般に出回っている精油は西洋のものが多いのですが、日本産の精油もあります。
日本産の精油の多くは、日本の森を守ったり、地域活性のための製品を作ることから生まれました。
また、精油というかたちでなく、自然と生活の中でその効能を取り入れているものもあります。
ヒノキのお風呂や、かまぼこの板やクロモジ楊枝など・・・。
クロモジ

緑っぽい皮のある太めの楊枝が、和菓子と一緒に出されることがあります。これがクロモジ楊枝です。
かの千利休は、豊臣秀吉に、庭先で取ってきたばかりのクロモジの枝を楊枝にして勧めたとか。
クロモジの楊枝は、新鮮なものだとことのほか香りが強く、この香りが持つ効能(鎮静効果や抗菌効果など*)を利休も知っていたのでしょうか。
*効果は期待されるものです。
「クロモジ」もいわゆる「鰻に山椒」「刺身にわさびや紫蘇」と一緒だったわけです。
このように、私たちは、この日本固有落葉樹の芳香だけでなく、期待される抗殺菌作用や鎮静効果を自然と生活に取り入れているのです。
クロモジは、よく垣根にも用いられ、特に桂離宮のものはとても美しい佇まいをみせています。
大嘗祭(だいじょうさい)には、クロモジの小柴垣に熱湯をかけて香りを立たせる儀式もあります。
大嘗祭
毎年11月に国と国民の安寧や五穀豊穣を祈って行われる宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)の 新嘗祭(にいなめさい)を即位後、初めて大規模に行うもので、皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式とされています。
クロモジの精油は枝葉から抽出され、木なのに、花のような甘い香りがするのが特徴です。
その香りは、クロモジの香りの主成分である「リナロール」によるもの。
リナロールは、花の香りとしてもよく知られ、シャネルNo.5にも使われているローズウッドという精油の主成分でもあります。
リナロールが含まれる精油の代表的なものに、ラベンダーアングスティフォリアやベルガモット (紅茶のアールグレイに添加) があります。
一般的にリナロールの(期待される)効能として挙げられているのは、鎮静、抗不安、抗菌、抗炎症作用などがあります。
香りでリラックス

香りの情報は脳の中ほどにある「大脳辺縁系」に瞬時に伝わります。
好きな香りを嗅ぐと、その瞬間に幸せな気分になりませんか。
嗅上皮から入った「においの情報」は、ダイレクトに大脳辺縁系へと伝わります。
大脳辺縁系の偏桃体は、快・不快などの「感情」を、また海馬は「記憶」を、司る部位です。そのため、においを嗅ぐことで、好き・嫌いの判断をしたり、感情が変化したり、ふと昔の記憶が蘇ったりするのです。

そのため、その人にとって心地よい香りを嗅ぐと、リラックスできたり、穏やかな気分になると言われます。
さらに、香り情報は心身の働きを調整する「自律神経系」の中枢である視床下部へ伝わり、ホルモン分泌を整える「内分泌系」、細菌やウイルスなどから体を守る「免疫系」などに作用することが分かっています。
クロモジの香り成分
近年、このように香りが心身に影響を及ぼす効果などを明らかにする研究も盛んに行われているそうです。
ところで、Yuicaのクロモジは、精油を取り出すために木々を切るのではなく、間伐材などを利用しています。
つまり、森の手入れをしながら、精油を作り出しているのです。
精油は、同じ植物でも、ワインやコーヒーのように、産地や土壌、高度、雨量などの生育条件や育成方法によっても香りが若干異なります。
なので、地域によって、また年によって、少しずつ香りが違うのにも面白さを感じています。
精油ができるまで
マツやヒノキなど木の精油を取り出すには、木部や枝、葉の部位に分けて、「水蒸気蒸留法」を行います。

水蒸気蒸留法とは、原料になる植物を入れた蒸留釜に水蒸気を通し、その植物の芳香成分が混じった蒸気を冷やして精油を取り出す方法です。

ますは、間伐材などを大きな窯に入れて蒸します。

そして、蒸気を冷やします。
芳香分子は水よりも比重が軽く(なかには水より重いものもあります)水に溶けないものが多いため、「精油」と「精油成分を微量に含んだ水・ハーブウォーター」の2層に分かれます。
そこから、精油だけを取り出したものが、100%精油として販売されるのです。
上の窯に入っている木々から取れる精油は、ほんの数滴だそうです。なので、精油はどうしても高価になってしまうのです。
精油の選び方
ところで、一般的に市場に出回っている精油の多くは外国産です。
そのため、人によっては、馴染みにくい香りもあります。
例えば、良い睡眠が得られると言われれているラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)。
私自身、ラベンダー畑での香りは大好きなのですが、精油になると、なかなか好きになれません。
なので、神経が高ぶっているときは、(私にとって)似たような効能が期待できるクロモジの精油やユズの精油を使うようにしています。

親しみやすい和の香り
ある日、日本産と海外産の精油でブラインドテストをしてもらいました。
参加者の男女比は女性7:男性3です。皆さん、日本産の精油の香りを嗅ぐのが初めての方々でした。
4種類(日本産2・海外産2)の精油をかいでもらい、直観で「好きな香り」を選んでもらったのです。
すると、日本人の方が選んだ香りは(今のところ)100%が日本産の精油でした。
「なんとなく好き」がその理由でした。
期待される効能を書いておいてなんなんですが、「好き」が一番大切なのです!
日本産の精油は、西洋の精油と比べると、香りが控えめな気がします。
ただ、身の回りの木々や植物の香りなので、親しみやすく、初めての方でも受け入れやすいようでした。
海外でも日本産精油を利用されているアロマインストラクターの方がいらっしゃるので、外国人の方でも違和感なく使用していただけるようです。
精油を選ぶとき
好きな香りが見つかったら、次は、学名をみてみます。
植物には学名(ラテン名)があり、それは世界共通の名称です。日本産の精油にも、その学名がしっかり記載されています。

例えば、西洋精油でよく知られているラベンダーには、学名が異なる5種類があります。
しかし、眠りを誘う効果が期待されているラベンダーは、ラベンダー・アングスティフォリア (Lavandula angustifolia) です。
呼び方は様々で、ラベンダー、真正ラベンダー、コモンラベンダー、イングリッシュラベンダーなどがあります。
学名による違いを知らないと、注意が必要な精油を知らずに使ってしまう可能性もあります。
ただ、日本産の精油は種類が少ない点が幸いして、学名が異なる精油がなく、初心者の方でも扱いやすい精油ともいえます。
購入時の注意事項
精油を選ぶときの注意事項は西洋の精油と同じです。
購入の際に確認したほうがいい点(瓶やケースに記載)をまとめてみました。
ポイント
- 学名(植物名)、抽出部位、抽出方法、原産国が明らかであること。
- 製造者が明らかであること。
- 使用上の注意や連絡先が書かれていること。
使用時の注意事項
また、親しみやすい香りだといっても、精油は濃縮されたものなので、使用時にも注意事項はあります。
以下のポイントを守りましょう。
ポイント
- 精油を直接肌につけない。
- 禁忌を知る:精油の禁忌をよく読んで使用する。
- 注意事項を知る:精油の注意事項をよく読んで使用する。
- 使用過多を避ける:同じものを2週間以上、そして毎日使用しない。濃度が薄いものでも1か月を目途に別の香りに変えましょう。
- ブレンドしたモノにはラベルを貼る:ブレンドしたものには、誤使用を避けるため、使った精油を明記しましょう。
- 使用期限を守る:柑橘系のアロマオイルは開封後半年・それ以外の精油は開封後1年に使い切りましょう。
小さなお子さんやご高齢の方、、妊娠、授乳中の方、皮膚が敏感な方などは影響が強く出る可能性があります。
日本で精油は雑貨扱いなので、薬のような効能を謳うことはできません。
雑貨なので誰でもが簡単に使用できるという利点はありますが、「自然のモノ=安全なモノ」という考えは、少し危険だと思います。
なので、安心安全に生活に取り入れるためにも、取り扱いに注意して、精油それぞれの特徴を知って利用することが大切なのです。
精油の禁忌
妊娠中や授乳中、使用時の体調、年齢、持病 (基礎疾患) によっては、使用制限があります。このことを「精油の禁忌」といいます。
日本産精油の多くは、水蒸気蒸留法で抽出されています。
なので、禁忌や注意事項は少ないのですが、一番気を付けないといけないのは「ミズメザクラ」という木の精油です。

ミズメザクラは、サクラという名前がついていますが、カバノキ科の木です。
その精油の芳香成分は、サルチル酸メチルがほぼ100%で、肩こりや筋肉痛に効果があるとされています。
芳香成分がほぼ1種類というきわめて稀な精油で、「精油が付いた手で目をこすらない」といった注意事項があります。
香りは、サロンパスそのものです。
芳香成分は、西洋の精油・ウィンターグリーン (ツツジ科) とほぼ一緒ですが、ミズメザクラの方がサロンパス感が強い気がします。

ミズメザクラの禁忌:アスピリン拒否反応がある人は使用不可です。
一般の方でも、多用・長期使用は腎臓に負担がかかります。
ただし、取り扱いにさえ注意すれば、とても役立つ精油です。
私は、低濃度 (20%以下) で、多用にならないように気を付けながら、スポーツ後のマッサージに使っています。
ここからは、冬場に特におすすめの精油3つをご紹介いたします。
モミ
クリスマスツリー🎄をイメージするモミの木ですが、日本のモミの木(マツ科)は、日本に自生する固有種だそうです。
そのモミの木の枝葉から精油が取れます。
詳細
・学名:Abies firma
・科名:マツ科
・抽出部位:枝葉部
・抽出方法:水蒸気蒸留法
・主な成分:αピネン・β-フェランドレン・酢酸ボルニルなど
・注意事項:一般の注意事項以外特になし
・禁忌:特になし
香りの特徴
針葉樹を手でこすったときに感じる、すっきりとした濃い緑の香りです。
森林浴効果があるとされる芳香成分(α-ピネンなど)が多いなか、鎮静効果が期待されるエステル類 (酢酸ボルニル) が香りに力強さを与えています。
西洋の精油・ジュニパー(ヒノキ科)の香りと似ている感じがします。
ちなみに、ジュニパーは、お酒のジンの香りづけとしても使われている植物です。
ただ、モミの精油には、ジュニパーには見られない芳香成分(酢酸ボルニル)があるので、より力強い香りを放っているのかもしれません。
モミの力
近年、モミなどの針葉樹から抽出された精油に多く含まれる成分のひとつ「酢酸ボルニル」は睡眠促進効果と肌質改善効果が期待されるという研究結果が出ました!
https://www.sei-plus.com/news/3030/
こういうことが少しずつ立証されて、いつか日本でも健康管理にも使えるといいなぁ・・・と思っています。
さらに、モミは、腐らない木とも言われ、その精油からも消臭力・抗菌力・防腐力が期待されています。
消臭や抗菌効果を期待して、かまぼこの板にも使われていたそうです。
夜に1滴、アロマストーンに垂らしてリビングに置いておくと、次の日に部屋の空気がスッキリしている気がします。
ショウガ
古くから薬用や食用として親しまれてきたショウガ(生姜)。その精油もあります。
詳細
・学名:Zingiber officinale
・科名:ショウガ科
・抽出部位:根茎
・抽出方法:水蒸気蒸留法
・主な成分:α-ジンギベレン、ゲラニアール、酢酸ゲラニル、1.8シネオール、カンフェン、ネラール など
・注意事項:皮膚刺激
・禁忌:特になし
- 成分の参考サイト:四万十しょうが(簡易成分表)
海外産のジンジャー精油に比べ、日本のショウガ精油の香りは、より柔らかくて軽い感じがします。
1滴垂らしてかいでみると、生姜をすりおろしたときの香りが広がります。
主な芳香成分は「α-ジンギベレン」で、その割合は30%にもなり、ショウガ特有の香りとなっています。
食用の生姜は身体を温める作用がある事でも知られていますが、精油にも同じ効果があると言われています。
なので、冬場は、マッサージオイルにほんの少し加えることで、体を温める効果を狙っています。
ショウガの精油をキャリアオイルで希釈して足の裏をマッサージすると、体がポカポカしてきます。
ただし、上記でも示しましたが、ショウガの精油には皮膚刺激がありますので、皮膚が弱い方はお控えください。
ユズ
ユズは、単独でも使えますし、他の精油とブレンドしても使える重宝する精油です。
毎年、冬の大掃除の時期から我が家で大活躍しています。
詳細
・学名:Citrus junos
・科名:ミカン科
・抽出部位:果皮
・抽出方法:水蒸気蒸留法
・主な成分:リモネン
・注意事項:なし(水蒸気蒸留法で抽出された精油は「光感作」なし)
・禁忌:特になし
もし、圧縮法による柑橘系の精油を肌に使用した際は、使用後6時間ほどは直射日光を浴びないようにした方がいいようです。
使用してすぐに日光や紫外線に当たると、炎症を起こすことがあるそうです(これを光感作・光毒性といいます)。
香りの特徴
アロマのテキストによると、ユズの香り成分・リモネンには「血流をスムーズにして体を温める作用が期待されます」と書かれていますが、それよりも、香りが好きなのでよく使っています。
朝晩に使えるよう、水蒸気蒸留法で抽出したものを選び、ブレンドするときも必ず少し入れるようにしています。
あくまでも個人の感想ですが、少しユズの香りを加えるだけで、香りがまろやかになる気がします。
精油がなくても、フルーツの柚子の果皮の部分を爪で押すと香りが放たれます。
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ユズの精油は、皮膚を刺激することもあるので、肌に使用する場合は濃度に注意してください。
冬のミスト
上でご紹介した冬のおすすめの精油から「モミ」と「ユズ」を使ったミストの作り方をご紹介したいと思います。
材料 (2%ミスト)
- 精油:10滴 (比率はお好みで)
- 無水エタノール:10ml
- 精製水: 40ml (水道水でも大丈夫です)
- ビーカーなど量を測れるもの
- ガラスのスプレー容器
精油の力でプラスチックが溶けてしまう場合がありますので、ガラスの容器をおすすめします。
作り方
- ビーカーに無水エタノールを入れる。
- 1にモミとユズの精油を10滴加えてよく混ぜる。
- 2に水を45ml入れてよく混ぜる。
- 3を蓋に入れる。
濃度計算
通常、精油の1滴は、0.05mlです。1mlは20滴です。
50mlの水と無水エタノールに対して、10滴の精油を加えると、濃度1%となります。
計算方法
- 50ml(希釈液の量) x 1% (希釈濃度) = 0.5ml(エッセンシャルオイルの量)
- 0.5ml ÷ 0.05ml(エッセンシャルオイル1滴) = 10滴(エッセンシャルオイルの滴数)
※希釈液は、無水エタノールと水を合わせた量です。
濃度の早見表
10ml | 20ml | 30ml | 40ml | 50ml | |
濃度1.0%の場合 | 2滴 | 4滴 | 6滴 | 8滴 | 10滴 |
濃度2.0%の場合 | 4滴 | 8滴 | 12滴 | 16滴 | 20滴 |
ルームスプレーとして利用するときの濃度は、1~2%がおすすめです。
注意
- 出来上がったものは、火のそばには近づけないでください。
- 精油の原液は直接肌に付かないよう注意し、もしついた場合は水で洗い流したり、キャリアオイルでふき取って下さい。
- 作ったものは、早めに使い切るようにしてください。
爽やかな木の香りに、柑橘系の香りを加えてみました。私が作った配分は、モミ (7)とユズ (3)です。
換気したり、掃除した後に部屋にスプレーすると、ほっと落ち着きます。
空気清浄機
ところで、寒くなるとなかなか換気をするのが難しくなります。
代わりに使うのが空気清浄機。
しかし、空気清浄機を使っている部屋でアロマを焚いても意味はありません。
空気清浄機は部屋のどこに置けばいいの?アロマを焚いても大丈夫? ~調べたことと解決策~
なので、冬場はお掃除やマッサージに精油を取り入れるといいかもしれませんね。
さいごに
今回は、あまり知られていない、日本産(和)精油をご紹介しました。
アロマ(精油)は、日本では雑貨扱いのため簡単に手に入ります。
ただ、そこに秘められた効能を知り、正しく使う方法を身に付けるだけで、より生活の質を上げることができるのではないかと考えています。
少しずつ知識を増やしていって、ご自身にあった利用方法を見つけていくのも楽しいかもしれませんね。
日本産の精油は、どこか懐かしい、そして親しみやすい香りなので、見かけられたらぜひ香りを確認してみてくださいね。
参考資料
この記事は、以下のテキストを参考にさせていただきました。
- NARD JAPAN アドバイザーコーステキスト(非売品)
- Yuicaスペシャリストテキスト(非売品)
最後までご覧いただきありがとうございます。