湯布院の観光名所は、「豊後富士」とも呼ばれる秀峰な由布岳を望む盆地に広がっており、自然に溶け込むような建物がたくさんあります。
列車での玄関口はJR由布院駅です。
今回は、春の花や香り、自然に溶け込む場所を探しながら、宿へ向かったようすをお届けしたします。
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ゆふいん駅
JR由布院駅に到着しました。駅舎の文字は、漢字ではなく、ひらがなになっていますね。
JR由布院駅の駅舎は、大分県出身の建築家・磯崎新氏によるものです。高さ12mにも及ぶ吹き抜けとなっているロビーが開放的な駅舎です。
構内には、観光案内所、待合室を兼ねたアートギャラリー、1番ホームには有料の足湯があります。
駅舎には、待合室としても利用できる「由布院駅アートホール」があり、写真展、工芸品展など多彩な企画が開催されています。
内装デザインは、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏だそうです。
建築やデザインに詳しくない私でも存じ上げている方々の名前が連なっています。
改札を抜けたところに「久大本線全線開通」の大きなポスターがありました。
災害から復興は、地元の方だけでなく旅行者にとっても嬉しい歩みです。
由布院駅の改札は1カ所です。日本でも数少ない改札口を設けていない駅で、駅員さんが対応してくれました。
また、改札のそばには、手作りの時刻表があり空席も一目で分かります。
お手洗いには、湯の町ならでは暖簾 (のれん) が付いていました。
このお手洗いは、隣りにある、由布市ツーリストインフォメーションセンター (YUFUiNFO:ゆふいんふぉ) の建設時に、駅舎が左右対称になるように増築されたそうです。
YUFUiNFO
山々に囲まれる環境に合わせるため、YUFUiNFOは森の中にいるような空間となっています。2階には、自由に利用できるスペースがありました。
ここでは、観光案内だけでなく、手荷物配送サービス・レンタサイクル・辻馬車・スカーボロの受付を行っています。
9時から15時の間だと、大きな荷物を宿まで届けてくれるようです。
観光客の少ない、のどかな田園風景を回ってくれる辻馬車。湯布院に行ったのは平日でしたが、予約はいっぱいとなっていました。残念。
由布岳を望む大通り
JR由布院駅からは一本道が伸びているので、由布岳に向かって歩きます。
平日のお昼過ぎはガラガラでしたが、コロナ禍でも、土・日になると、もっと人出があるようです。
今なら、こんな景色は見ることができないと思います。
抹茶ジェラート
途中、ゆふいんの森号の観光ガイドでも紹介されていた、抹茶ジェラートをいただきました。この後少し歩くので、その前にエネルギー補給です(^^)
駅から歩いてくる道の左側にあり、(人通りが少ない時間帯でも)このお店だけ人の出入りが激しかったので、すぐに見つかりました。
この後、湯の坪街道を通って、最初の目的地へ向かいます。
フローラルビレッジとその周辺
湯の坪街道は、お土産もの屋さんやカフェなどが並ぶ通りですが、そこから少し離れたところに、湯布院フローラルビレッジがありました。
イギリスの コッツウォルズ地方の街並み を再現したアミューズメント施設です。
敷地はそれほど大きくはないですが、キャラクターショップやカフェが並んでいます。
また、敷地内には、女性専用の素泊まりホテル「YUFUIN FLORAL VILLAGE HOTEL」があるようです。
ハイジもピーターラビット(他にはトトロやムーミンなども)は好きなのですが、なんか想像していた場所とは違っていました。
コッツウォルズ地方の中でも、 Bibury (バイブリー) という町の景色に似ています。
由布岳とバイブリーの街並み。
若い人で賑わっていましたが、私が求めていた湯布院とは違っていたので、次へ進みます。
金賞コロッケ
移動する前に、おやつ (^^)
フローラルビレッジのすぐそばにあった「金賞コロッケ」を買ってみました。
美味しくて、夕食までのつなぎにちょうどいいおやつです。
みっふぃー 森のキッチン
キャラクターショップから逃げようと思ったのに、またつかまってしまった「みっふぃー森のちっきん」。
パン屋さんとキャラクターグッズのお店です。
私が求めていた世界ではないのですが、つい立ち寄って、お土産を買ってしまいました(*ノωノ)
北海道の小樽もそうでしたが、最近の観光地が似た感じになった理由のひとつ。
キャラクターのお店がとても多いのです(この他にはスヌーピー茶屋もあります)。
春の香り
春は、草花も芽吹き始め、新たなエネルギーに溢れた季節です。守りに入っていた冬から、少しずつ開放的な気分になっていきます。
コロナ禍の今、一昨年の春のようにはいきませんが、新たな環境に身を投じるという方も少なくないと思います。
そんな春にぴったりなのは、目覚めの香りです。
春におすすめの香り
- ベルガモット
- グレープフルーツ
- レモン
- スィートオレンジ
- ニオイコブシ
香りを選ぶとき、好き嫌いで選ぶのが一番いいようです。
上でご紹介した、ベルガモットやグレープフルーツなど柑橘系の香りは、あまり苦手な方がいらっしゃらないと思いますが、いかがでしょうか。
最後にご紹介した「ニオイコブシ」は、春を告げる花・マグノリアの仲間です。精油を抽出するのは枝葉なのですが、それでも、まるで花を思わせるかのような甘い香りがします。
こちらもあわせてどうぞ。
ベルガモットの香りに癒される午後
ベルガモットの香りがついたフレーバー・ティーのアールグレイ。気持ちを落ち着かせてくれる紅茶です。
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湯布院のマグノリア
「マグノリア」とは、モクレンやコブシなどモクレン科モクレン属の仲間の総称です。
私が行ったときは、桜がちょうど開花し始めた頃でした。その時期、すでにマグノリアが咲いていました。
まずモクレンが、桜よりひと足早く開花します。そのため、モクレンは、本格的な春の到来を告げる花とも言われています。
そして、次に咲き出すのがコブシです。コブシの花が咲くと、農作業を始めたことから「田打ち桜」「種まき桜」とも呼ばれています。
東京・調布市には、モクレンやコブシを含めたマグノリアのさまざまな品種を集めた、全国でも珍しい「京王フローラルガーデン アンジェ」があります。
今年は行ってみたいと思っていたのですが、機を逃してしまいました。
でも、偶然に湯布院でコブシ(シデコブシ?)を見ることができました。これも一期一会ですね。
すこしピングがかった色合いも花の形も優しい雰囲気で、見ていると、穏やかな気持ちになりました。
春の青空を背景に、花やつぼみが膨らみかけている様子は、本当に美しかったです。
コブシの香り
ところで、花を愛でたあとに気になるのは香りです。コブシは、ほのかな甘い香りがするそうです。
私が見たコブシは高木だったので、香りを確かめることができませんでしたが・・・。
私は、春になると、ニオイコブシ (匂辛夷) の香りを使いはじめます。
ニオイコブシは、コブシと同じく、早春に真っ白な花を咲かせます。
その香りは、枝葉から抽出したにもかかわらず、花のように甘い香りとレモンのような爽やかな香りが融合しており、春のめざめを感じさせてくれるのです。
また、ニオイコブシは「タムシバ」とも呼ばれます。
ニオイコブシは、花が終わった後に生える葉を噛むと甘みを感じ、「噛む柴」が訛って「タムシバ」と呼ばれるようになったと言われています。
冬眠から覚めたツキノワグマも大好物な植物だそうです。
赤と白のマーブル椿
さらに道を歩いていると、赤と白のマーブルの椿を見かけました。香りは感じませんでしたが、やわらかな緑と鮮やかな花の色が、気持ちを明るくしてくれました。
喧騒から離れて裏道を歩いていると、いろいろな花に目を奪われます。
地域活性のひとつの手段として、地域全体を美術館・植物園とするという方法があります。
その視点で見てみると、春の湯布院は(人通りが多い場所を外れると)、由布岳をバックにどこを見ても絵になるし、咲き始めた花々は、街全体が植物園といった感じでした。
COMICO ART MUSEUM YUFUIN
少し喧騒を離れて、美術館にも立ち寄りました。
COMICO ART MUSEUM YUFUINは、JR由布院駅やバスターミナルからも徒歩圏内にある2017年にオープンした美術館です。
建物の雰囲気からも分かるように隈研吾さんの建築です。
周囲の環境に溶け込むような建物を建てる「負ける建築」を目指し、「湯布院に溶け込むムラ」をコンセプトに、美術館と3つの研修棟で小さなムラを形成するようにデザインされているそうです。
湯布院の街並みに溶け込むような建物の外壁には、西日本で伝統的に使われている焼杉が使われています。
焼杉は、防虫、防腐効果を高める技法として活用されています。遠目には周囲の緑の中に黒い建物がある感じですが、近づいてそばで見ると杉ならでは感覚が伝わってきました。
また、水盤がエントランスから建物のまわりを囲んでいます。
さらに、エントランスのそばは水鏡となっていて、青空と木々が写っています。ここでは、行くたびに違った景色が見られそうです。
開館時間など最新情報は こちら でお確かめください。
1階には受付と、2つの展示室、レセプションロビーやロッカールームなどがあります。
そして、2階はラウンジとテラスで構成されています。
私が行ったとき(2021年3月)は、ガイドツアーは中止されており、1時間の自由観覧となっていました。制限がある分、少し料金が安くなっていました。
白い扉
おしゃれな美術館あるある・・・館内は扉も壁も白で、最初どこから入ったらいいのかよく分からず、迷ってしまいました(笑)。
館内は写真撮影可 (動画は不可) で、作品を説明するキャプションはありませんが、説明が書かれたリーフレットを貸してもらえます。
GALLERY
「GALLERY 1」には、村上隆氏の作品が6点展示されていました。
村上の自画像とも言われているキャラクターDOB君が登場する2つのシリーズ「そして、そしてそしてそしてそして」と「雪月花」です。
もう一つのギャラリーには、日本を代表する写真家の一人でもある杉本博司氏の作品が展示されていました。
現代を代表する2人のアーティストの作品だけを常設展示しているユニークな美術館ですが、2つのギャラリーの間はガラスで遮られており、足元には水盤を置くという面白い仕掛けになっています。
建物の中央に水盤があるため、2つの展示室を直接に行き来することはできません。
村上隆氏の濃密な作品世界を堪能したあと展示室の外に出て自然を感じ、そして杉本博司氏の作品へ・・・、さらにガラス越しにお二人の作品を鑑賞できるようになっていました。
2階に行くため、もう一度行同じ通路を通るのですが、方向が違うと異なる景色が見られ、この空間も作品のひとつのように感じました。
屋上庭園
事前情報によると1回の予約では10人くらいまで一緒にまわるような感じでしたが、私が行ったときは、1時間貸し切り状態でした。
2階ではお茶も用意されているので、こちらで寛ぐこともできます。
枯山水の屋上庭園には、奈良美智の代表的な子犬のシリーズから、「Your Dog」が展示されています。そして、その後ろには、雄大な由布岳(標高1,583m)を見ることができます。
奈良美智は子供と動物の様々な心理状態や感情を絵画、ドローイング、彫刻などの作業を通じて表現することで有名である。
動物の中で最も多く活用するモチーフは「犬」であり、2017年からは頻繁にその「犬」を巨大なインスタレーション作品として表現している。
アルミニウム製でミニマルな白い表面を持ったこの作品は、どこかへこんでいるようにも見える目と、穏やかそうな表情をもった作品だ。
奈良美智の作品は、青森の白い美術館 でも見られるのですが、由布岳をバックにしたこの作品は、また違った感じで楽しめました。
奈良はこの作品を通じて「作品とそれを見ている人との対話」を求めているそうです。
部屋に入ってお茶を飲んだり、外に設置されている椅子に座って作品を見たり・・・と、とても贅沢な時間を過ごすことができました。
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湯布院の町づくり
ところで、湯布院の町づくりの歴史は長く、1960年代にさかのぼります。
1969年、岩男町長(当時)が、国際会議出席のためにヨーロッパに渡り、西ドイツの伝統的保養温泉地を視察しました。
その報告書や、同じ大分県の大山町で行われていた海外研修の話に感化された3人の若い旅館経営者が立ち上がります。
自費でヨーロッパに出かけ、50日をかけて様々な知識を吸収して、知恵を出し合い、湯布院の町づくりの基盤としたのです。
そのため、湯布院では、ヨーロッパの保養温泉地のような自然をさりげなく取り入れた宿や施設が、至る所で見受けられます。
金鱗湖 (きんりんこ)
田園風景や由布岳などの自然の中で寛ぐ・・・
そう感じる場所はたくさんありますが、その中のひとつが、この「金鱗湖」の周辺の景色です(あくまでも個人の感想ですが)。
Café La Ruche
その金鱗湖のそばにあるカフェで一休み。
挽きたてのコーヒーや、焼きたてのクロワッサンが楽しめるカフェです。
隣には、シャガールの作品を見ることができる小さな美術館を併設しています。
店内も素敵なのですが・・・
せっかくお天気のいい日なので、金鱗湖のそばのテーブルでいただくことにしました。
丁寧に淹れられたコーヒーは、とても美味しかったです。
次の日も朝に立ち寄って、クロワッサンを買って、ゆふいんの森号の中でランチとしていただきました。
アカシア
アカシアの木を、カフェの庭で見つけました。気持ちを明るくしてくれる黄色い花が満開でした。
アカシアには、1000を超える種類があると言われ、1〜2mの低木から20m以上の高木まで種類も様々です。
古代エジプトでは神聖な木として扱われていました。建築材や船の材料、食品、染料、薬として、私たちの生活を支えてきた歴史のある植物ですが、アカシアのハチミツもよく知られていますね。
よく似た花にミモザがあります。
ミモザとアカシア
- ミモザ:マメ科・オジギソウ属
- アカシア:マメ科・アカシア属
ミモザのようなオジギソウ属の葉っぱは、名前が示すとおり、触る(刺激を与える)と、小葉が先端から一対ずつ順番に閉じて、最後に葉全体がやや下向きに垂れ下がります。
いわゆる、お辞儀するような動きをするのが特徴です。
私が見たのは、ブルーブッシュというアカシアで、オーストラリア南西部という限られた場所に分布している種類です。
香りは、アーモンドラテに蜂蜜を垂らしたかのような感じです。ほんのり香る程度なのですが、気分が落ち着きました。
咲き初めはライトイエローですが、もう少し経つと、オレンジっぽくなるそうです。
誰もいない場所へ
金鱗湖の周辺には遊歩道もありますので、爽やかな空気を味わいながらの散策も楽しいです。
さらに、奥深くへ。何もない、誰もいない・・・けれども、自然と静けさがある場所。まさに、私が求めていた湯布院が、そこにはありました。
菜の花
もう少しすると、桜が彩を添えるのでしょう。ただ、そうなると喧騒も増えそうです。
川沿いに咲いている満開の菜の花に癒されながら、宿まで歩いて行きます。
きれいな菜の花ですが、食いしん坊の私は、どうしても食材としてみてしまいます。
菜の花のように、春になると蕾を膨らませる植物は、夏から秋にかけて養分を蓄えて冬を乗り切り、春に一斉に開花します。
春の蕾には栄養素がたっぷり含まれていますので、蕾の生命力を丸ごと食べることになります。不溶性の食物繊維をたくさん含んでいるので、 新陳代謝が活発になる春にはピッタリの食材です。
菜の花にもいろいろ品種があり、食用にされるものと、観賞用にされるものは品種が違うそうです。
辻馬車
ふと、音がしたので振り返ると、辻馬車が通り過ぎていきます。
駅から直接来ると徒歩20分くらいの場所ですが、賑わいから離れてみたいときに、おすすめの場所です。
宿までの道のり
さいごに
最近の湯布院は、幅広い年代の方が楽しめるようなつくりになってきたようです。
温泉に浸かってリフレッシュする、自然に触れてのんびりする、学生さんが友人と食べ歩く・・・さまざまな滞在方法ができるようです。
そんな湯布院の町を、大きな美術館、そして植物園と見立てて歩いてみました。旅先で五感を働かせると、非日常をさらに実感できるような気がします。
これからは、蛍を楽しめる季節がやってきます。四季を通して、また違った楽しみ方ができるかもしれませんね。
こちらも合わせてどうぞ。
移動も楽しい!JR九州の「特急ゆふいんの森号」で由布院駅へ
ゆふいんの森Ⅰ号とⅢ号の乗車記です。
続きを見る
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