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ウォレス・コレクション(The Wallace Collection)は、ロンドン・メリルボーンのマンチェスター・スクエア(Manchester Square)のそばにある美術館です。まるで宝箱の中に入ったかのような空間で、来なければ後悔した場所でした。今回はそんなウォレス・コレクションをご紹介いたします。
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ウォレス・コレクション

ウォレス・コレクションは、所蔵品だけでなく建物も魅力的です。
18世紀後半に、第四代マンチェスター公爵がカモ猟の際に滞在する私邸として建てられ、当時は「マンチェスター・ハウス」と呼ばれていました。その名残で、向かいに広がる小さな広場は、現在もマンチェスター・スクエアと呼ばれています。
マンチェスター・ハウスはスペイン政府やフランス政府にも一時的に貸与され、それぞれの駐英大使館として使われるなどの歴史があります。
1797年、第二代ハートフォード侯爵が賃借権を購入して「ハートフォード・ハウス」と改名、ハートフォード侯爵位を冠するシーモア=コンウェイ家のロンドンでの住居として100年ほど使用されました。
リチャード・シーモア=コンウェイは美術蒐集家としても知られた人物で、ここにある約5,500ものコレクションは、全てがプライベートコレクションです。
15世紀から19世紀にかけての絵画や彫刻、磁器、調度品、家具、そして武具や甲冑、大砲までバラエティーに富んだ収蔵品は外部貸出していないため、ここでしか見られない貴重なものばかりです。
そのコレクションと屋敷は息子リチャード・ウォレスに相続され、現在の「ウォレス・コレクション」となり、ウォレスの未亡人がイギリスに追贈、1900年、彼女の死後にコレクションが公開されました。現在はイギリス政府の管理下にあります。
そのため、無料で観覧でき、予約も不要です(2025年3月現在)。
詳細
・営業時間:年中無休
<館内>(毎日)10:00 - 17:00
<レストラン>(日~木)10:00-16:30
(金土)10:00-23:00
- 最新情報はこちら >>> The Wallace Ccollection.org
アクセス
地下鉄
・ボンドストリート駅から徒歩10分弱
地下鉄ボンドストリート駅から大手百貨店セルフリッジズの方向へ。Duke Street(デュークストリート)に入って徒歩約5分、Manchester Square(マンチェスター・スクエア) という名前の小さな公園の裏側にあります。
中心地にある美術館なので、Googleマップで検索すれば、バスでもアクセスできます。
はじまりはフロントホール

館内に入ると、中央に大階段があるフロントホールがあり、その右の部屋から鑑賞開始します。

館内は無料のアプリをダウンロードすれば、いろいろ説明を読みながら鑑賞することができます。「ポンパドゥール夫人の犬の名前は?」という質問の答えも見つかるようですね。

最初の部屋から、その展示品の数と素晴らしさに圧倒されました。
各部屋は、赤や緑、ピンクなど壁紙の異なる壁紙が使用されており、絵画や調度品との調和が美しいのも特徴です。


この部屋だけで一体いくつの展示品があるのか!?
見ごたえのある貴重な品が所狭しと並んでいます。
写真には写っていませんが、羊の皮で覆われたショーケースにはカメオのブローチなど様々なアクセサリーなどが並んでおり、じっくり見ていくと時間がいくらあっても足りません。
ルイ14世様式

c.1670 - 1675.
ウォレス・コレクションにはルイ14世様式の調度品が多いのですが、ひときわ目立つ木製のキャビネットがさりげなく飾られていました。
こちらは、17世紀のフランスの人気家具職人、アンドレ=シャルル・ブールによる木製キャビネットです。べっ甲、真珠貝、象牙などを使用した華やかな装飾のキャビネット、足元には「夏」と「秋」を表現したブロンズの女神像が飾られています。
スモーキングルーム

その先にあるのがスモーキングルーム。
スモーキングルームとは、晩餐のあとに、紳士のみが集って紫煙をくゆらせながら政治談義などを交わした場所です。
1912年当時は、スモーキングルームの壁面に、英国・ミッドランド西部のストーク・オン・トレントというシティでつくられたミントン社製タイルがびっしりと張り巡らされていたようで、その写真が飾られていました。
ちなみに、ストーク・オン・トレントは燃料となる石灰と陶土が豊富だったことから、17世紀より陶器の街として産業革命と共に発展した場所です。
スモーキングルームに先端のプリントタイルが活用されたのは、清潔を保つ実用性と華やかな装飾性を兼ねているからとか。そういえば、ヴィクトリア&アルバート博物館のカフェの壁も実用性と装飾性を兼ねたタイル張りでしたね。


部屋の端にスモーキングルームの一部が残されていました。
ブルーの床やトルコ風の草花のパターンのタイルが美しく、このようなタイルで室内全体が覆われていたと想像するだけでワクワクしました。
レストラン

ところで、美術館の1階には中庭のようなスペースがあり、そちらはレストランになっています。軽食だけでなくアフタヌーンティー、そしてコース料理もあるレストランですが、飲み物だけでも利用できるようです。
天井はガラス張りになっており、夜は全く違った雰囲気になりそうですね。

この日のランチはBLT。
アフタヌーンティーと迷ったのですが、こちらもボリュームがあって、おいしかったです。

面白かったのが南部鉄器で出された紅茶。
最後まで熱々の紅茶がいただけました。
値段はロンドンにしてはリーズナブルに感じました。もちろんクレジットカード/デビットカードも利用できますよ。
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2階

ウォレス・コレクションは、14世紀から19世紀中ごろのヨーロッパ中から集められた油絵も多く所有しています。17世紀の作品においては、オランダとベルギーの作品が多いようです。

2階に上がった最初の青い壁紙の部屋は、オランダ芸術の世界。

ということで、レンブラント祭り!

年代別の肖像画など、レンブラント好きには堪らない世界が広がっていました。

絵画も素晴らしいのですが、そこに置かれている家具類も素敵なものばかり!一つ一つが歴史的にも貴重なものばかりで、感覚がおかしくなりそうでした。
ピンクの部屋

館内には、18世紀フランスのロココ調の家具も集められており、雰囲気に合わせて壁紙の色が違います。こちらはピンクの壁紙の可愛いイメージの部屋。中央にさりげなく置かれているテーブルや調度品も、世界的に重要とされている作品ばかりだそうです。
赤の部屋

各部屋に吊るされているシャンデリアも、その豪華さに目を奪われるものばかり。

一面赤い壁紙で覆われている部屋は、ルイ15世とポンパドゥール夫人をイメージしたバック・ステート・ルームです。
緑の部屋

ルイ14世時代のキャビネットが並ぶ大ドローイング・ルーム
こちらの緑の壁紙が調度品や絵画を引き立てていました。
オーヴァル・ドローイング・ルーム

個人的に一番好きな部屋です。
曲線的なデザイン花や植物のモチーフ、象牙や貝殻、宝石など使い豪華な材料(金箔銀箔など)で仕上げたロココ様式の家具がさりげなく置かれています。もちろん触れることはできませんが、なんの仕切りもなく見学できる贅沢な空間です。


楕円形の部屋には、フランソワ・ブーシェの名作が飾られています。
ブーシェは、ロココ美術を代表するフランスの画家です。
study room

1767年-1768年
同じく study room にあるのは、≪The Swing(ブランコ)≫、ジャン=オノレ・フラゴナールの最も有名な絵画です。
ピンクの服を着た女性が公園のブランコに座っており、右側の年配の男性がそのブランコを揺らしている、一見ほのぼのした絵画です。しかし、よく見てみると、左下には男性がおり、その視線はスカートの中に注がれています。
解説を読むと、ブランコを揺らしているのは彼女の夫で、左下の茂みの中にいるのは愛人だそうです。ブランコに揺られながら、茂みに隠れている若い男性に靴を脱ぎ捨てており、自分の魅力を最大限に可愛く見せる方法を熟知しているかのようなあざとさを感じました。
ロココ時代の傑作として有名なこの作品は、一見、ピンクの花びらのようなドレスを身にまとい天真爛漫にブランコで遊ぶ女性を描いたものと思いきや、実はいろいろなことが秘められているようですね。
若い男性の上にはキューピットシーっと口に手を当てている像。どんな意味があるのでしょうか。

華やかなシャンデリア、ロココ様式の家具、そして18世紀のフランス・セーブル磁器が展示されている study room。
ルイ15世やポンパドゥール夫人が愛したセーヴル焼は、鮮やかな色彩とロココ様式の絵画装飾が特徴ですが、ここまで多くのセーブル焼がまとまってあると圧巻ですね。ヘブンリー・ブルーの古代ギリシャ・ローマ式の壷には、水浴する女性が描かれており必見です。
ポンパドゥール夫人

1759年/Landing
次の部屋にはポンパドゥール夫人の肖像画がありました。
前髪を大きく膨らませて高い位置でまとめたヘアスタイルをポンパドゥールと呼びますが、彼女の髪型がオリジナルですね。銀行家の娘として生まれたポンパドゥール夫人はルイ15世の公妾となり、邸宅を建ててはロココ様式の家具や調度品で埋め尽くし、「ロココ」を流行らせたそうです。
グレートギャラリー

正面から見たときはこじんまりとした美術館かと思ったのですが、かなり奥行はあり、「これでもか!」というほど芸術品の海にどっぷり浸かることができます。

ルーベンス(Peter Paul Rubens)の ≪The Rainbow Landscape(虹のある風景)≫。1636年ごろの絵画で、この作品は、ナショナル・ギャラリーの ≪早朝のステーン城を望む秋の風景≫ と対をなしているそうです 。

上の絵画は、ディエゴ・ベラスケス≪白いドレスのマルガリ-タ王女≫。
ファ―ジンゲールと呼ばれる鯨骨製の下着で大きく膨らませたスカートを着けた5歳の王女の絵画はスペインのプラド美術館で見た気がするのですが、こういった上半身だけのものもあるのですね。
なお、マルガリ-タ王女は母親の実弟で、11歳年上の神聖ローマ皇帝レオポルト1世と結婚したそうです。

最後は、大階段を下りて1階へ。
時計


大階段の左側の部屋(甲冑や大砲の展示室の隣り)には、1700年代の豪華な時計が飾られていました。宝の多さと素晴らしさで心地よい疲労。最後まで楽しませてくれる唯一無二の美術館でした。
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さいごに
ウォレス・コレクションには25室もあり、どの部屋も見どころがいっぱい。
今までこの美術館の存在を知らなかったのですが、これからはロンドンに行くたびに訪れたいと思ったほどはまってしまいました。行ったのは日曜日だったので人は(思っていたより)多かったですが、部屋数が多いので貸切で見られる場所もありました。おすすめの美術館です!
最後までご覧いただき、ありがとうございます。