旅とアロマ

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五感で楽しむ旅とアロマテラピー

アロマをもっと知りたい ~精油の基礎知識~

 更新日2018/11/02

アロマインストラクターとして、日本産アロマYuicaスペシャリストと、NARD JAPANのアロマアドバイザーの資格を取りました。アロマについて少しでも多くの方に知ってもらいたく、学んだことをもとにして、精油の基礎知識や体へ入る仕組みをまとめてみました。

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精油とは

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精油とは、植物の花、葉、茎、樹皮、果皮、根、実、種子などから抽出した天然の芳香物質*1です。その精油を利用して、健康管理や芳香療法を行うことをアロマテラピーと言います。人工的な香料には無い、100%純粋な個性的な香りを楽しみながら植物がもつ薬理作用が期待できます。

精油の抽出方法

精油を抽出するための代表的な方法をご紹介します。

水蒸気蒸留法

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原料になる植物を蒸留釜に入れ熱すると、精油成分が遊離・気化し、水蒸気と一緒に上昇します。この精油成分が混じった水蒸気を冷却層で冷却すると、液体に戻りますが、精油成分の多くは水には溶けにくい性質を持ち、水よりも比重が軽い(なかには水より重いものもあります)ため、精油と、精油成分を微量に含んだ水の2層に分かれて溜まります。上澄みの精油だけを取り出すことにより、100%ピュアな精油が作りだされます。 

分離された水には、水溶性の芳香成分が溶け込んでいるため、ハーブウォーターとして活用されています。精油より安価に入手できますので、使い勝手がいいです。

圧縮法

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https://www.photo-ac.com/
グレープフルーツやレモンなど、柑橘類の果皮から精油を抽出するときに用いられる方法です。果実の皮を押しつぶすと液体が飛び散りますが、これが柑橘類の精油です。

圧搾法は、水蒸気蒸留法と異なり、熱による影響を受けないため、デリケートな成分を損なうことなく新鮮な香り成分を取り出すことができるという利点があります。一方、酸化しやすく、希釈した精油が肌についた状態で紫外線に当たると、皮膚にダメージを与える光毒性(ひかりどくせい)という作用を持つものもあります。

 光毒性に関する参考文献

(公社) 日本アロマ環境協会 | アロマを知る | アロマの研究・調査 | アロマサイエンス研究所 | No.22 柑橘精油に含まれるベルガプテン量の比較

溶剤抽出法

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溶剤抽出法で得られた精油を、アブソリュートと呼びます。熱や圧力、水分を加えると精油成分が壊されてしまうようなデリケートな植物に使われる方法です。

アブソリュートは、花の香りの抽出が難しい、ジャスミンやローズ*2に用いられます。

溶剤抽出であるため、原則として原液を使用しないという「禁忌(きんき)」があり、使用上の注意が必要です。

精油を選ぶときの注意

アロマには、「天然香料」「合成香料」「調合香料」の3種類があります。アロマテラピー使用する場合には、100%ピュアな「天然香料」を選んでください。

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精油が「天然香料」かどうかは、瓶にEssential Oil(エッセンシャル・オイル)と書かれており、学名や抽出方法、抽出方法、原産地が表示されていることを確認します。

真正ラベンダーの精油には、以下のように書かれています。

 学名:Lavandula angustifolia

 抽出部位:花穂(かすい)

 抽出方法:水蒸気蒸留法

 原産地:フランス(等)

また、ラベンダーには、真正ラベンダー(Lavandula angustifolia:ラベンダー・アングスティフォリア)、ラベンダー・スピカ(Lavandula spica)*3があります。ラベンダー・スピカは、瘢痕形成作用を特性にもち、スキンケアや皮膚疾患のケアに用いられ、精神的な不調への効果は期待できません。そのため、学名などの情報が重要になってきます。

精油の吸収経路

精油が持つ「におい分子」が体内に吸収されるには、吸入・経皮、経口、座薬の4種類がありますが、ここでは、普段の生活で楽しみやすい、吸入(鼻から脳へ)と経皮(皮膚から全身へ)の流れについて見ていきます。

ー 鼻から脳へ

ヒトには五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)が備わっていますが、「嗅覚」は五感の中で唯一、能に直接働きかける感覚です。「におい」を感じる仕組みが解明されたのは、わずか十数年前です。

コロンビア大学のRichard Axel(リチャード・アクセル)博士とフレッド・ハッチソン癌研究センターのLinda Buck(リンダ・バック)博士は、2004年に「嗅覚受容体遺伝子の発見と嗅覚感覚の分子メカニズムの解明」でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

簡単に言うと、鼻のなかにある、においを識別するタンパク質の実態を明らかにし、これらのタンパク質がにおいの情報をどのように脳に送るかを追求しました。

においを感じるしくみ

空気中に蒸発した細かな精油成分(におい分子)を吸い込むと、鼻の奥(鼻腔)の上部にある嗅上皮(特別な粘膜をもつ)が「におい分子」をキャッチします。

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日本デオド-ル株式会社HPより引用

嗅上皮は、嗅細胞・支持細胞・粘膜からなっています。「嗅細胞」の先には、10~30ほどの嗅毛があり、その嗅毛には、においを感じるセンサー(におい分子の受容体)が並んでいて、粘膜で溶けた「におい分子」をとらえます。「におい分子」をとらえると、嗅細胞が興奮して、その成分を電気信号へ変換して、情報が脳へと伝えられます。

(嗅上皮にある)嗅細胞は、常に外界にさらされているために有害な化学物質により損傷されやすい。このために、定期的に基底細胞が新しい嗅細胞に分化して、損傷した嗅細胞に置き換わっている。ラットの嗅細胞は、およそ30日で新しい細胞に置き換わる。http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/physi2/ajitonioinokagaku.pdf

嗅上皮には、年齢に関係なく再生できる嗅細胞があるため、「においのアンテナを磨く」ことで、アルツハイマー型認知症の周辺症状の緩和をもたらすのではないかという研究も盛んになってきています。

嗅上皮から嗅球へ

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http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/physi2/ajitonioinokagaku.pdf 

「におい分子」が、1・2・3の3種類(上の図の黒・白・グレーで表示)で構成されていると仮定すると、それらの成分が「嗅上皮」のゾーン1・2・3に吸収されます*4

さらに、脳の一部である「嗅球*5」にある「糸球体」で対応するゾーン1・2・3に集まり、情報が送られます。

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https://www.photo-ac.com/

嗅上皮で感知された「1・2・3」の情報が「嗅球」に伝えら、視覚情報などの他の情報と共に「1・2・3=ラベンダーの香り」というパターン情報が作り上げられます。

つまり、「におい」は、におい成分の刺激と学習によってパターン化され、「1・2・3」が同時に嗅覚を刺激すると、「ラベンダーの香り」と認識できるになるのです。

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嗅上皮から入った「においの情報」は、ダイレクトに大脳辺縁系へと伝わります。大脳辺縁系の偏桃体は、快・不快などの「感情」を、また海馬は「記憶」を、司る部位です。そのため、においを嗅ぐことで、好き・嫌いの判断をしたり、感情が変化したり、ふと昔の記憶が蘇ったりするのです。

大脳辺縁系へ伝わった信号は、さらに、視床、視床下部、下垂体へと伝わります。「視床下部」は、自律神経をコントロールして、呼吸や体温などを調整します。そして「下垂体」も、内分泌系を調整するホルモンを分泌しています。

ー 鼻から全身へ

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https://www.ac-illust.com/

精油を加えたアロマオイルでマッサージをしたり、受ける際に、アロマオイルを嗅ぎながら「大きく深呼吸して下さい」と言われたことはありませんか。におい分子は、鼻から気管・気管支に入る経路もあり、その分子が肺胞を取り巻く毛細血管に行きわたり、全身を巡ることを狙っているからです。

ー 皮膚から全身へ

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アロマオイルを使って優しくマッサージすると、精油の成分が皮膚から浸透します。さらに、アロマオイルに含まれる細かな精油の分子は、真皮まで吸収し、血液やリンパにのって全身に送られることが研究によって分かってきました。

 参考文献

http://www.ypcyy.co.jp/contents/ae_colmun/AEAJ52_column13.pdf

精油のはたらき 

精油が体に吸収されるルートは、大きくは、上で示した大きく3つです。良い香りでリラックスできるのは、鼻から脳に伝わった精油の芳香成分が、自律神経をつかさどる脳の一番深い部分に直接働きかけるためです。また、血液やリンパ管を介して全身を巡るルートによっても、体のさまざまな器官に影響することがあきらかになっています。

嗅覚は本能である大脳辺縁系へダイレクトに伝わります。だからこそ、自分の感覚が正直に反応する香りを選ぶことが大切です。

簡単な消臭スプレーづくり

抗菌、消臭効果の高い精油にリラックスできる香りを加えれば、家や旅先で使える抗菌・消臭スプレーが簡単に作れます。抗菌・消臭効果が期待できる「青森ヒバ」に「ユズ」を加えると、やさしい香りになります 

【材料】
  • 精油:20滴
  • 無水エタノール 50ml
  • 精製水 50ml
  • ビーカーなど量を測れるもの
  • ガラスのスプレー容器
(無水エタノールや精製水は薬局で買えます)

 注意事項:精油の力でプラスチック容器が溶けてしまう場合がありますので、ガラスの容器をおすすめしす。

【作り方】

  1. カラスのスプレー容器に、無水エタノールと精油を入れる。
  2. 1をよく混ぜてから精製水を入れ、良く振ってからスプレー容器に入れる。
注意

精油は水と混ざらないので、必ず無水エタノールを入れて下さい。先に精製水を入れてしまうとオイルが混ざらないので注意してくださいね。出来上がったものは、精油を使っているので、火のそばには近づけないでください。

精油の原液は直接肌に付かないよう注意し、もしついた場合は水で洗い流したり、キャリアオイルでふき取って下さい。

消臭・抗菌効果があるので、帰国後は、お手洗いの消臭スプレーやお掃除にもつかえます。

精油と上手に付き合うために

体内に入る精油の分子は微量ですが、それでも、影響を与えることには違いありません。精油のなかには、使う際の注意事項や禁忌が示されているものもあり、使用量を守らなかったり、間違った使い方をすると却って体に悪い影響を与えてしまうこともあります。取り扱う際には以下の注意事項を守って、ご自身の責任の下、安全にお使いください。また、何かあった場合は、すぐ医師にご相談ください。

原液のまま肌につけない

精油は(原則)原液のまま肌につけないよう注意してください(ラベンダー・アングスティフォリアなど原液でも使用できるものもあります)。マッサージに使用する場合は、必ずキャリアオイルなどで希釈してください。

お米から生まれたキャリアオイルは、そのままでも利用できるのでおすすめです

精油を飲まない

精油は、原則として「飲む」使い方はしません。フランスやベルギーでは医療行為として精油が使われているので、医師の指導により、医療行為として内服を行うケースがあります。しかし、精油の中には経口毒性をもつものがあり、専門知識無しに行うのは危険です。

目や傷口、粘膜に触れない

目や傷口、粘膜付近などに触れないように注意してください。「ミズメザクラ」や「ウィンターグリーン」の精油は、サリチル酸メチルという成分を非常に多く含み、その成分が目に入ると失明の恐れもあります。精油がついた手で目をこすったりせず、万一、目に入った場合は水でよく洗い流して、直ちに眼科医師の診断を受けてください。

光毒性に注意

ベルガモット、アンジェリカ、レモン、グレープフルーツなどの柑橘類の精油には光毒性があるため、肌につけたまま日光にあたると、シミ等トラブルの原因となります。肌への使用後、2~6時間は日光にあたるのを避けてください。ただし、オレンジ・スィートや、(減圧)水蒸気蒸留法により抽出された日本産精油のユズ、ダイダイ、コナツは、光毒性の心配はありません。

ユズの精油は、精油をブレンドするときにも役立ちます

注意が必要な方

  • てんかん発作の既往歴をおもちの方:

フェンネル・スイート、ローズマリー・カンファーの使用は、念のためお控えください。また、ラベンダー・スピカは、長期間・継続的・広範囲に多量の使用は避け、低濃度で注意してお使い下さい。

  • 妊娠中、授乳中の方:

パルマローザは、原則として、出産時以外の妊婦への使用をお控えください。

  • ホルモン依存型癌の方、乳腺症の方:

パチュリーやサンダルウッド、サイプレス、クラリセージのご使用はお控えください。

保管と有効期限

3才未満のお子様に対しては、マッサージやアロマバスなど肌に触れる形での使用はお控えください。また、誤飲、誤用による事故を避けるため、精油の瓶は小さなお子様の手の届かないところに置いてください。

そして、キャップはしっかりと閉め、日光のあたらない冷暗所で保管してください。開封後は品質が劣化していきますので、柑橘系の精油は半年以内、その他のものも1年以内に使いきるようにしてください。ただし、香りに異変を感じた場合には、使わない方がいいです。

 

 参考文献

 

まとめ

精油は、日本では、病気を治す薬として認められていませんが、非日常体験が多い旅先では、好きな香りと精油の持つ効能で心やからだが和らぐこともあります。私は、旅先で寝つけない時や、足のむくみを取りたい時に使用しています。みなさんも、禁忌や注意事項を守って好きな香りを楽しんでみてくださいね。

 

 

*このページの内容は、大学での授業を基に構成しています。病気などに効果があることを保証する訳ではないことをご了承下さい。
*心身の状態がすぐれないときは、精油に頼ることなく、すみやかに医師の診断を受けるようにしてください。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございます。

 

*1:分子量で約30-300くらいの揮発性の低分子有機化合物。

*2:ローズには水蒸気蒸留法で抽出されるローズ・オットーと、溶剤抽出法で抽出されるローズ・アブソリュートがあります。

*3:スパイクラベンダーや野生ラベンダーとも呼ばれます。

*4:似たような「におい分子」は、同じゾーンに集まります。

*5:大脳辺縁前方先端に位置し、左右一対ある。鼻腔にある嗅細胞が受容した「におい分子」の情報を処理する。